徒然

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6周年記念に乗ってみる

JUGEMテーマ:趣味


タイバニ6周年おめでとう第二弾。
2013年の5月のインテで出したモブ視点のコピー本です。完売してだいぶたつので、全文公開。


最後の書き下ろし以外はすべてUP済みなんですが、探して読むのは面倒だろうと書いた本人でも思うので、こういう形にしました。
縦書きを無りやり横書きにしたので読みにくいかもしれませんが、ご容赦を。













市民は見た
アポロンメディアにて





アポロンメディアヒーロー事業部フロア内小会議室。
 タイガー&バーナビーのふたりはそこで社内報に掲載されるインタビューに応じていた。
 何しろシュテルンビルトの七大企業のひとつであるアポロンメディアは大きい。本業のメディア関連の事業部の他に施設管理や総務、人事や経理などに勤務する社員も多数いる。自分達以外の事業部がどんな仕事をしているか、どういう人間がいるのか、まったく知らないことの方が多い。
 ようするに社内の情報や価値観の共有化をはかるコミュニケーションツールとして『社内報』というものが存在し、社内イントラネットで配信されている、というわけである。CEOの訓示や経営方針、各事業部の予定などが主だが、次回から新企画がスタートすることになった。
 言わずもがな。新たに創設された『ヒーロー事業部』とそこに所属するヒーロー達の特集だ。
 アポロンメディアが誇るバディヒーロー。タイガー&バーナビー。
 先ごろ起きた『ジェイク・マルチネス事件』においてシュテルンビルトを救った紛れもない『HERO』。
 バーナビーのデビュー時に一度インタビューを載せたものの、バディとしての登場は初めて。しかもシリーズ企画だ。
 ――提案しつづけてよかった。
 社内報を制作する総務部の担当チームはようやく巡ってきたチャンスに心の中で拳を握る。
 取材時間が昼休みに指定されてもめげない。というか、せっかくだからバディとランチを共にしながらにしようといいほうに考える。
 いうなればパワーランチだ。オリエンタル系の同僚によれば『同じ釜の飯を食う』のは互いの親睦を深める有効な手段であるらしい。
 そう話すとワイルドタイガーはアイパッチをしていてもわかる大きな目をさらに大きく見開いた。
 「・・・・・間違ってます?」
 「いやあの。仲間っていう意味ならあってんですけど」
 微妙にずれてるっていうか、なんというか。ぶつぶつと呟きながら、手にしていたローストターキーのサンドイッチをもそもそかじる姿はなんというか。
 ――小動物?
 ――かわいくない?
 ぼそぼそと隣り合った者同士小声でかわす。
 初めて間近で見たヒーロー。バーナビーはテレビで見る以上にきらきらしく、王子様然としていた。イメージ通りだった。
 驚かされたのはワイルドタイガーだ。あの行動と言動から思い描いていた姿とまるで違う。
 まず顔が小さい。ゆえに頭身が高い。
 頸はがっちりとして肩幅広く、胸板も厚い。たいして腰は細く、足もすらりと長い。理想的な逆三角形の体格を保持している。黙って立っていればモデル並みのスタイルだ。彼の経歴から推定される年齢を鑑みるとそら恐ろしいほど。
 ――そういえばワイルドタイガーが移籍してきた当初、ヒーロースーツが変更されたことに対して『タイガーの肉体美を隠すな』という内容の非難のメールが多数寄せられたと広報部の同期が愚痴っていたが、それってもしかして。
 確かに昔のスーツなら。
 うっかりまじまじとタイガーを眺めているとバーナビーが軽く咳払いをした。
 「ところで。今回のテーマは僕らが普段どんなランチを取っているか、でしたよね?」
 うっかりしていた。そうだ。シリーズの第一回はヒーロー達の食生活――特にランチタイムの特集を組むことにしたのだ。彼らの活動を支える食事がどんなものか――おすすめの店や好物を取り上げることで、ヒーローの人間的な側面を伝える、要するに『好きな人の好きなものを知りたい』第一弾として、このネタが選ばれたのは、けして総務部女子社員の総意ではないと思いたい。
 「あー、ランチっつーか、社員食堂にはいつもお世話になってるよな」
 アポロンメディアは文字通り『メディア』事業が本業のため、関連部署は常に稼働状態にある。彼らの福利厚生のため、社員食堂も二十四時間体制で開いている。時間帯によってメニューに差こそあれ、行けば必ず何か温かいものが食べられるというのはありがたい。
 時間を問わず出動を余儀なくされるヒーローにとっては確かに頼もしいことだろう。
 が、こちらの意図した答えからは少々外れる。
 「タイガーさん」
 さすがにバーナビーはそれに気づいたようだ。呼びかけに咎めだてるような色があった。すぐにワイルドタイガーにも通じる。
 「あれ、それじゃダメ?」
 なんとなく肩が下がったような感じだ。
 「大丈夫ですよ。で、タイガーさんは社食のメニューでは何がお好きですか?」
 とりなすようにいうと視線があらぬ方へ向かう。頬をかくのは考えているときの癖だろうか?
 「とりたててすきっつーもんはないなぁ・・・・・嫌いなのもないけど。まずかないってくらいで?」
 隣でぷっと吹き出す声がした。あまりに正直な答えだ。
 アポロンメディアの社員食堂は確かに便利でありがたい存在だが。まぁ、たしかに。
 どこぞの計測器メーカーのようにレシピ本が出るほど旨いとは言えない。
 「あなたって人は・・・・・」
 美貌の相棒があきれ返ったように言う。だがそれは切り捨てるようなものではなく『仕方ないなぁ、この人は』くらいの苦笑交じりな感じだ。
 「っだよー、お前だって『濃いか薄いかはっきりしてくれないかな』って言ってたじゃねーか?」
 バーナビーの顔がはっきりひきつった。
 「言っていいときと悪いときがあるでしょう? あー、ここのところはオフレコでお願いします」
 「はい、承知してます」
 笑って請け合うと、ルーキーは肩をすくめた。先輩の方はと言えば、下唇を尖らせて『なんだよー』とむくれている。
 「ところでバーナビーさんは? ランチはどんなものを?」
 水を向けると絵にかいたようなハンサムな笑顔が返ってきた。
 「どちらかと言えばランチは仕事の合間に取っていることが多いですね。会社にいるときは提出書類を作成しながら、撮影や取材のときは隙をぬって。なので片手で食べられるものが多いですね。サンドイッチとか。あ、そうそう」
 ふいに年上の相棒を見やる。
 「このあいだ、テイクアウトしていただいたホットドッグ、あれ、おいしかったです」
 「おー、そうだろそうだろ! あそこは昔っからの俺のひいき!」
 「え、タイガーさんのおすすめなんですか?」
 俄然興味を持った風で身を乗り出すと、ワイルドタイガーは『へへへ・・・・・』とまんざらでもない顔をする。
 「あのケータリングカー、前の会社の近くにいつも店だしてたんだよ。よく買ってたんだ。こないだ、たまたま見つけてさ。バニーにも食わせてやろうと思ったんだ。どれが美味かった?」
 「そうですね。シンプルなのもよかったですが、ちょっとスパイスの効いたザワークラウトが添えられてたのが気にいりました」
 「レリッシュのは?」
 「僕には少しすっぱかった。あなた、あれくらいが好きでしょう?」
 「好き―。それにケチャップとマスタードたっぷり」
 「マヨネーズが好きなのは知ってましたが、ケチャップもですか?」
 「いいじゃん、うまいもん。それにケチャップは野菜だぜ?」
 「確かにマヨネーズよりはいいでしょう。でもあなた極端だから。量が問題なんです」
 「ええー?」
 正論で説教するバーナビーとオーバーリアクションでのけぞって見せるワイルドタイガー。コンビを組み始めた時のような取ってつけた感はない。
 ――むしろじゃれあい?
 なんとなくふわふわした空気が漂う気配がする。
 「何というケータリングですか?」
 「名前は勘弁して。オレンジ色の車体にウィンクしてるコックの顔が描いてあるから、それ参考に探してくれよ」
 奥ゆかしいのか、お気に入りが知られるのが嫌なのか、タイガーは笑むだけでそれ以上は語らない。
 ――帰ったら即行検索。
 固く心に誓う。
 「そだ、こないだバニーが誘ってくれたカフェ。あそこもうまかった」
 「ベーグルサンドの店ですか?」
 「そうそう。ベビーリーフとスプラウトのサラダにスモークサーモン挟んだやつ。あれまた食べに行こう」
 「タイガーさん、意外と野菜の味にうるさいですもんね」
 「意外ってなんだよ。オリエンタルは農耕系なの、DNAの中にしみこんでんのよ、うまい野菜の味」
 「あ、新しく角にできたカフェですか?」
 一緒に来ていた同僚が食いつく。どうやら行ったことがあるらしい。バーナビーが完ぺきなハンサムスマイルで頷いた。
 「ええ。あの近くで撮影した時頂いたのがおいしくて。タイガーさんを誘ってまた行ったんですよ」
 「いい感じの店だよな。お前が行ってもあんま騒がれなかったし。何よりうまかった」
 アポロンメディアの誇るルーキーは甘いマスクとルックスで、女性に大人気だ。道を歩いているだけでサインを求められることもあると聞く。落ち着いて食事のとれるところなど、限られているだろう。そのうちの一軒にどうやらその店はなれそうだ。
 「あなたが気にいったのなら、ぜひまた」
 メガネの下の『エメラルド』と評される瞳が意味ありげに瞬いた。
 ――う、わぁ!
 ――ふたりでランチっていうより・・・・・。
 これは。絶対に。
 「でもお前、あんまりうろうろすると、ファン、はともかく、変な奴らに追い回されるんじゃね?」
 「そんなことで僕があなたとのランチタイムをあきらめるとでも?」
 バーナビーは鼻先で笑う。
 「堂々としてればいいんです。僕らはバディで、一緒にいても何らおかしくない」
 「まあ、そうだけど」
 「それとも、僕以外にランチに誘いたい人がいるとか?」
 「馬鹿言え、ンな奴いるかよ!」
 「ですよね」
 バーナビーは微笑んだ。
 心臓がざわりと泡立つ。
 ――こんな顔をするんだ。
 蕩けそうな。嬉しそうな。
 多分『恋人に向ける笑顔』というのが最も正しい表現で。
 それを向けられているのが、年上の、同性の、左の薬指に誓約の指輪をはめている人。
 インタビューを行っているこちらの頭が沸騰しそうだというのに、平然として相棒の笑みを受け止めている。
 「ああもう。こないだも『アポロンメディアのバディヒーローはプライベートでもバディか?』なんて記事あったばっかじゃないか。だいたいそういうときロイズさんから怒られんの、俺なんだからな」
 「女性相手にスキャンダル起こすよりいいって後で言ってましたけどね」
 「そういや、こないだの・・・・・」
 「あれはもうすぐ彼女主演の映画が公開されるので、そのための話題作りだって説明したじゃないですか」
 「ソウデシタネ」
 「もう、タイガーさん!」
 「あの・・・・・」
 軽く咳ばらいをした、それだけで目の前のふたりは現実を取り戻したようだ。
 「すいません」
 「すんません」
 「いいえ」
 今度はこちらがにっこりと笑ってみせる。
 「当社の誇るバディヒーローはたいへんなかがよいとわかって、我々もうれしいですよ。で、ですね・・・・・」








 後日。
 ふたりのインタビューの第一回目が乗った社内報の閲覧数は驚異的な数字をたたき出した。プリントアウトされた数もとんでもないものだ。
 他社からも閲覧許可を求めるメールがひっきりなしに届き、こちらも規程に乗っ取り有料で公開した。それほど安くない金額だというのに、その閲覧数も担当者が驚くほど多かったという。







































 フォトスタジオにて





 人間の『眼』ではなく物言わぬ機械を通してみて初めて見えるものもある。
ファインダー越し。本日の撮影対象の姿に今までとは違う何かを感じ、カメラマンはそのままの姿勢で声をかけた。
「何かいいことあった?」
レンズに映ったヒーローは煌めくような笑顔を崩さず『そう見えますか?』と問い返す。
「うん。何というか、『本当に』楽しそうにやってるなって思って」
そう答えると、被写体は一瞬ではあるが、目を瞠った。
――これでもこっちはプロだぜ。
彼より何年も早くこの世界に入り、多くのモデルを撮ってきた。キャリアと経験はそこそこある。どんなにきれいでも、作り物の笑顔と本心からの笑みを間違えたりしない。
彼の微笑みはいつも『計算され、作られ』ていた。どうやれば注文に対して求められた答えが出せるのか、ちゃんとわかっていて浮かべられたものだ。クライアント側からすれば、狙い通りの絵が撮れれば何の問題もない。ゆえに誰も――撮影する自分でさえ――何も言わなかった。
 

いつだって同じ顔で笑うんだなぁなんて。


 自分も彼もクライアントのオファーがあって仕事をしている。彼らが納得しているのならそれでいいはずだ。
 『仕事』なんだから。
 プロのモデルでもあるまいに、いつでも一定のレベルで笑顔を作ることができる彼はさすがだ――心のどこかでつまらないと思ってはいたが。
 だが今日の彼は何かが違う。計算以外の要素が表情に込められている。
 ――何か、じゃない。
 自分はこれを知っている。今まで何人もの被写体の中に、同じものを見てきた。
 「好きな人でもできた?」
 「え?」
 疑問形を取りながら、半ば確信している。愛想の良い、さわやかな青年。彼の代名詞が『仮面』であることくらい、レンズを通せばわかる。
 ヒーローという危険な職業に従事する彼が素顔をさらす代わりに被ったマスクは他のどのヒーローより重く強固によろわれていた。
 それが剥がれかけている。
 若き英雄は眼鏡の下の新緑を瞬かせ、軽く肩をすくめた。
 「わかります?」
 「まあね」
 こちらもウィンクして答えると、彼は声を立ててひどくうれしげに笑った。アシスタント達がびっくりして凍りついているのとはまるで対照的に。
 「否定しないの?」
 「しませんよ」
 腕を組み、思案のポーズをとって。
 「恋をしている僕ってどういう風に見えます?」
 「どうって?」
 「客観的な意見を聴きたいんです。自分としては、結構バカみたいだろうって思ってるんですけど」
 「ふぅむ・・・・・・しいて言えば、そうかも」
 「具体的にお願いします」
 「いつもよりハンサムオーラが増してる。そうだな、背景に薔薇だの星だの散ってるみたい?」
 ヒーローはおもむろに自分の背後を見、こちらに向き直った。
 「ありませんよね」
 「カメラには映らないけど、俺の眼にはそう見える」
 ――ジャパンの少女漫画ってジャンルじゃ、ハンサムってやつは必ずそれをしょってるんだぜ。
とは心の中でつぶやくだけにしておいた。
 「ま、あんたが今まで以上にかっこよくて、市民の目を引きそうだっていうことさ」
 その勢いで口説けば誰だってなびくはず。サムズアップしてやれば、アシスタント達も力強くうなずいた。
 だが当の本人は。
 「そうですか・・・・・?」
 疑り深い目で見返してくる。そして軽くため息。
 「残念ながら、まったくそうじゃないんですよ」
 ――お、いい。
 『シュテルンビルトの王子様』の憂い顔は極めてレアだろう。スタジオのあちらこちらで小さな悲鳴が上がる。
 「あんたでも落とせないやつがいるのか」
 「ええ。まったくもって悔しいですけど」
 ことごとくかわされてるんです、と眉間にしわを寄せている顔もいい。今までのお人形さんよりずっと血の通った人間らしさを感じる。
 眉目秀麗、頭脳明晰、しかもアッパークラスの人種である彼の心をつかんだのはどんな人物だろう。俄然興味がわく。
 「何なら相談に乗るぜ。あんたの相棒よりは恋愛経験あるし」
 コンビを組んでいる相手が初恋を成就させて結婚してしまったような世にもまれな男だ。大抵の人間がそうはいかない。自分も、アシスタント達もそうだろう。みな大なり小なり場数は踏んでいる。
 金髪のヒーローはそうですね、と答えた。
 「差支えない程度に教えてくれ・・・・・どんな子?」
 「子って・・・・・。そうですね、同じヒーロー業界の関係者で先輩にあたる方ですよ」
 もっとも僕はルーキーなので、ほとんどの皆さんが先輩なんですけど。言葉を選びながら返事をする姿もレアだ。だいたい彼はあらかじめ答えを用意して場に対していることが多い。撮影の際も、だ。こういうイレギュラーな場面は想定していなかったのだろう。
 「そういや、こないだ噂になってた子、どうした?」
 つい先日、降ってわいたスキャンダル。このハンサムと女優の某の密会写真が世間を騒がせたのは記憶に新しい。
 自分がみるに実に『やらせ』くさい。
 件の女優はデビューこそ鳴物入りだったものの、最近は鳴かず飛ばず。再起をかけた主演ドラマが来月から放送される予定のはずだ。
 案の定、というかあからさまにヒーローは憮然となった。
 「あんなもの、話題作りの一環ですよ。彼女主演のドラマに僕も出ることになって、収録にいったらあのざまだ。わざわざそのシーンをロケにして、しかも他のスタッフと別の時間を指定して、彼女とふたりきりにするなんて。カメラマンに情報流したのも向こうですよ。悪意しか感じません」
 ひどく悔しそうだ。
 「しかも抗議しようとしたら上司に止められたんです。彼女の父親があちこちに圧力をかけているらしくって」
 ――そういえば父親っていうのはどこかでかい会社の重役だったよな。
 確かにそれどうよとは思ったが、それぐらい必死なんだぜ、彼女と心の裡でつぶやくにとどめる。
 「そのせいで、僕、好きな人に誤解されてるんです。『可愛い彼女ができてよかったな』なんて言われました。あれはやらせで、僕ははめられたんだと言っても聞いてもらえなくて」
 ――あれ?
 なんとなくだが違和感。アシスタント達も怪訝そうにしている。
 同業で先輩の女性、というと真っ先にブルーローズが浮かぶ。会社の方針で女王様を演じているが、プロ意識は高いものの根は素直な美少女だ。彼と並べてもそん色はない、そんな風に思っていたのに。
 どうも彼女ではないような――ブルーローズはたぶんまだ十代だ。間違っても二十歳にはなっておらず、彼よりも年下――。
 彼が好意を寄せているのはどちらかと言えば年上の、はっきり言えば『おばさん』的な?
 「それは、僕にも悪いところはあります。その人があまりにも僕の気持ちを捻じ曲げて解釈するものだから、『今度○○○と共演することになったんです。彼女、素敵ですね』とか言ってしまって。ちょっとくらい気にしてくれればいいくらいに思ってたのに、逆効果になってしまったんですよ。ああ、もう!」
 あの時の自分を殴ってやりたい。物騒なことを言い出したので、慌ててファインダーから目を離す。
 「おいおい、落ち着けよ。彼女とのことはほんとに何でもないんだろ?」
 「当たり前です!」
 「じゃさ、どんといけよ、ヒーロー。あんたマジでかっこいいから」
 「・・・・・・」
 さすがに興奮しすぎたと感じているらしい。大きく深呼吸をしている。目配せすると意を察したメイクが飛んでいき、少し修正を入れる。ありがとうございますと言っている姿は何時ものクール&スタイリッシュなルーキーだ。
 「その人のこと、いつから好き?」
 再びファインダーを覗きこんで問う。四角の枠に収められた彼は困ったように、しかし柔らかく笑った。過去を振り返るよう、彼方に向けられた視線。その横顔は美しい。
 「わかりません・・・・・初めて会った時から、僕には理解しがたい人で。正直不愉快だと思ってました。反発もしたし、ひどいことも言った。無視しようとさえしたけど、結局できませんでした。今から思えば子供のやることですね、好きな人にどうアプローチしていいかわからず、嫌われるようなことばかりしてしまうなんて」
 まあ、あの人が少々鈍感で、打たれ強くて、あきらめの悪いお節介焼きだったので、見捨てられずに済みましたけど。褒めているのかそしっているのかわからない言い草。その人にほんの少し同情する。こんなねじくれた好かれ方をするなんて。
 かわされているのもわかる。
 「僕、ちゃんと『他人』を好きになったことがあまりないんです」
 まなざしは遠くを見ている。シュテルンビルトに澄んでいる人間ならだれでも知っている――四歳の時、彼に何が起きたか。それから二十年もの間、たったひとつの目的を追い続け、それ以外から目を閉ざしていたと想像するのは優しい。
 そうして。それがかなった未来を考えることもしてこなかったに違いない。自分が誰かを愛するようになることも、その心を手に入れるための方法も。
 「いいな、と思う人はいました。でもこんなに好きになった人は初めてだ。恋愛って執着に近いんですね。時々身体に悪いんじゃないかと思いますよ」
 「ああ、まあ、寝ても覚めてもっていうもんな」
 相手のことを考えていてもたってもいられなくなる。まるでティーンのようだ。
 ――そうか。彼はそういうのも初めてなのか。
 止まっていた時を動かし、遅まきながら人生を謳歌し始めたスーパールーキー。それを傍で見続けていた酸いも甘いもかみ分けた妙齢の年上女性――推定――なら、重ねた経験の分、彼の想いが浮かれ呆けた結果に見えるに違いない。
 ――正気に戻ったら、それでおしまいってか。
 そうじゃないかもしれない。でもそうかもしれないという可能性もあるから、あえて目を瞑っているのか。
 「あの人への気持ちを自覚して、そういう目で見ていたら、とんでもないことに気が付いたんです。その人、天然の人たらしで・・・・・。無意識で誰彼かまわず誘惑するんです、ほんとに自然に。その中の誰かに取られるかもしれないと思ったらたまらなくなって」
 『好きです』と告げた。でも帰ってきたのは自分も好きだという返事。
 「僕の『好き』とは全然違う」
 動物が好き、ピザが好き、そんな『好き』。
 「わざとなのか、それとも本気でそういう意味なのか。経験値が少ないせいか、わからなくて」
 どうなんでしょう、と言われても。
 「・・・・・どうなんだろうね?」
 スタジオ内が急に静かになった。BGMとしてかけられた流行りのポップスが空々しい。
 本当は『好き』がどんな意味でも構わないのだ。若きヒーローはふっとファインダーを覗きこむようにしながらそう言った。
 「誰もあの人の『特別』にはなれやしない。それはわかってるんです。せめてあの人の一番近くに立っていたい、形だけでも」
 ・・・・・・・ているけど、許されていない。
 ごくごく小さくつぶやかれた言葉ははっきりとは聞こえなかった。だから余計に『彼の本音』なのだとわかった。
 「そんなこと言うなよ」
 力強くいったのは、アシスタントのひとりだ。スタジオにいる者達皆が、『そんな弱気でどうする?』と口々にルーキーを励ます。
 「なあ、ヒーロー、あんたの力は『ハンドレッドパワー』だろう、百倍の気持ちを込めて、口説き落とせよ。今みたいな顔で迫ったら、大丈夫、絶対落とせる。ここにいる全員が保証する!」
 サムズアップをきめて言えば、そうだそうだという大合唱。え、と目を丸くしたルーキーに、今撮ったばかりのカットをモニターに映して見せた。
 けぶるような金色のまつ毛が澄んだ伏し目がちの翠の瞳にわずかにかかっている。メガネのレンズ越しにもその美しさは伝わった。シミひとつない肌、整った鼻梁、うっすらとグロスを塗られた唇が何か語りかけようとするようにうっすらと開いて。
 まるで薔薇のつぼみがほころびようとしているようだ。
 『あなたを愛しています』
 ひたむきに、純粋に、『あの人』に捧げられた恋心。
 こんな表情を突き付けられて、揺らがない人間などいないだろう。
 「僕、こんな顔、してたんですか?」
 恥ずかしい、とほほを染めた彼を見て、ああ、と思うのだ。
 ただ綺麗なだけだった『王子様』は、心を得て、『ひと』を求められるようになったのだと。
 彼の恋がかなうといいと、本気で願っている自分がいることを。
 とても気分がいいことを。




 この日撮影された写真を表紙にした雑誌は異例の部数で発行したにもかかわらず発売数日で完売し、手に入れられなかった読者の非難の電話とメールで雑誌社側は大混乱だったらしい。Thitter、Hueisubook、某巨大掲示板、ネット上でもあらゆるところでサーバーが落ちまくった。
 そして『彼』の恋が成就したかどうかをシュテルンビルト市民が知るのはまだ少し先のことになる。










 ハンバーガーショップにて





気の置けないおしゃべりというものは、人間として当然の楽しみだ。特に同じテリトリー内の者同士だと、特に詳しい説明もいらないから、『アレ』だの『それ』だので勝手に盛り上がれる。愚痴にも肯定が来る。一緒にストレスも発散できるという大変安上がりな娯楽のひとつだ。
 Mバーガーゴールドステージ店。二十四時間回転しているこの店は、同じチェーン店の店と同様のメニューとサービスを誇る。要するに、ブロンズやシルバーステージの店と同じ値段で手軽に腹を満たせるというわけだ。テイクアウトにも応じている。メールや電話で予約があれば、時間通りに$0の笑顔とともにロゴ入りペーパーバックに詰められた商品が手渡されるのも、人気のひとつだ。
 ちょうど早朝の時間帯の勤務が終わり、ランチタイムにも間があるこの時間は、スタッフ間で引き継ぎ兼気兼ねない会話が交わされることが多い。就業規則では禁止されているが、見てみないふりをされている。
 「あ、ほらあの人よ」
 「この時間って珍しくない?」
 この店の目下の話題の中心は、最近常連になった東洋系の男性だ。背が高くすらりとした痩身。黙っていれば精悍で観賞に値する面立ちとモデル並みのボディラインだが動きはコミカルで、せっかくのかっこよさが九割減だとスタッフ内では残念視されている。大抵ひとりで来店し、テリヤキやチキンなどマヨネーズたっぷりのバーガーとコーラ――レジェンズコーラに決まっている――、ポテトを頼む。それをギュッとつぶし、ぱくつくさまを初めて見た時、目にした者全員が絶句した。そんな風に食べる客には後にも先にもお目にかかったことはない。それでいてまったく中身は零れないのだ。どういう技術かと思う。
 彼はだいたい昼時に現れる。いつもに比べれば、まだずいぶんと早い。
 「いらっしゃいませ、こちらでお召し上がりですか?」
 さあ、今日はテリヤキ、それともチキン、もしかしてフィッシュ? 笑顔のまま身構えたスタッフを前にして、男はへら、と笑った。そうするともともと年齢不詳な顔立ちが、ずいぶん子供っぽくなる。
 本人にも自覚があるのだろう、凝ったデザインのひげを生やしているくらいだから。
 「持ち帰りで。それとまだモーニング間に合う?」
 ――あら?
 ――珍しい。
 カウンターのスタッフも後ろで作業をしていたスタッフも、あっけにとられた――もちろん顔には出さない。
 「はい」
 「じゃ、エッグマフィンとツナマフィン、サラダとバターコーン。全部一個ずつ。サラダのドレッシングはフレンチで」
 「エッグマフィン、ツナマフィン、サラダはフレンチドレッシングで、バターコーン、全部おひとつずつですね。お飲み物はどうされます?」
 「あ、それはなしで」
 「かしこまりました。少々お待ちください」
 とたんに携帯の呼び出し音が響いた。男はおもむろにそれを取り出して画面をタップする。
 「どした、今注文したとこだから、もうちょっと待て・・・・・。なんだよその情けない声」
 男はくすくす笑いながら、携帯を肩と顎で支えた。財布を取り出すためだ。先に会計を済ませるのがこのチェーン店のシステムだということは促されなくてもよく知っているだろう。その間に注文品は他のスタッフの手でペーパーバッグに詰められる。
 「お前の分、エッグマフィンとサラダな。ドレッシングはフレンチってえ、なに?」
 札を取り出そうとした手が止まる。
 「あなたを信じてみようと思ったのにってどゆこと? は? ハンバーガーがよかったの? ビッグっておま、なにいってんだ、この時間、それはやってねぇの! 
だっ!」
 ひとこと吠えてから、男はあわてたように周囲に向かって騒いですいませんとペコペコ頭を下げた――これがあるから彼は日系だとスタッフ間では決定事項になっている――。急いで精算をすませ、後ろに並んでいた新しい客に場所を譲る。レジがふたつしか空いていないため、多少の列ができていた。
 「そういうルールなんだから、しょうがないだろ? ああもう、困ったやつだな、わかったよ。昼になったらまた買いに来てやるから」
 「お待たせしました」
 会話の間に『ども!』と礼を言って商品を受け取った。こちらが気を利かせて、わざわざ手つきのペーパーバッグに品を詰めたことは、どうやら気が付いていないらしい。
 「これから戻るから。おとなしく待ってろよ、バニー」
 ――うわ!
 ――何そのでろでろに甘い声。
 ――それ反則!
 そこにいた全員が思ったが、さすがシュテルンビルト旗艦店のスタッフは、動揺の色を見せなかった。はじけんばかりの笑顔で客を見送る。
「ありがとうございました!」

 


 その後。
 「ねぇ、やっぱりあの人、『あの人』よね」
 「あれでばれてないって思ってるのかしら(もろばれじゃんね)」
 「思ってるんじゃない? そういうとこ、可愛いわ(彼は『うっかり』してるとこがいいのよ)」
 「ねえねえ、ってことは先輩パシらせてるってこと?」
 「そういうんじゃなかったけど。むしろ好きでやってる感じ?」
 「うんうん」
 「でもさぁ・・・・・・」
 「?」
 「あの甘ったるい声、後輩にっていうより恋人にって感じじゃなかった?」
 「・・・・・ネットの一部じゃそういう噂もあるわよね」
 「あ、やっぱり」
 などという会話がスタッフルームでかわされた。



 そしてランチタイムが終わり、客の少なくなった店に現れたBBJが、テリヤキとビッグバーガーをひとつずつ、ポテトのLサイズとコーラをふたつ買い、笑顔を振りまいて帰っていったことを付け加えておく。

















ある店員の一日・1




開店直後。
 「ごめーん、ちょっと教えて!」
 某有名雑貨チェーンのウェストゴールド店。
食品、生活雑貨から文房具、園芸用品まで取り扱う、まさに何でも屋であり、 アポロンメディア他近隣の企業の多くの社員の御用達となっている。
朝一駆け込んできた人物も、よく見る顔だ。顎髭が特徴的な長身の男性。
「えーっとこんくらいの大きさで、ファイルの表紙にペタッと張りたいんだけど、そういう白い紙ある?」
 両手で大きさを示しながら、その客は大きな目をくりくりさせて店員に問いかけた。引っ掻き回された売り場の整理を行っていた彼女は手を止め、ほんの一瞬考えた。
 「シール、でよろしいですか?」
 「あー、うんうん」
 立ち上がってインデックスやタックなど、業務用の整理商品を展開しているコーナーに案内する。客の要望からすると、このあたりの製品で間に合うはずだ。
 ところが男の反応は違った。
 「だ! 違うって。シールじゃなくて、今位の大きさで裏に糊が付いてて、貼り付けられる紙が欲しいの」
 「?」
 ――えーっと。
 会話を最初から思い返す。客にも確認した。もしかして素材のことを言っているのだろうか?
 店員は商品を裏返し、使われている材料を確かめる。シール本体の材質は紙、そのあとに、のりや剥離紙の材料が明記されている。大きさも要望に近い。
 「こちらの商品の素材は紙で、裏に接着剤が付いています。この紙をはがしていただければ、ビニール素材のファイルにも貼り付けられますが」
 「へ、貼れるの?」
 「はい」
 「俺、このファイル(サイズはA4,表紙は樹脂製、色は派手な蛍光グリーンだが、特に大きな凹凸もない)に使いたいんだけど」
 「ああ、はい。これでしたらお使いになれます」
 「でも俺が欲しいのシールじゃなくて・・・・・」
 ――だからそういうのをシールっていうのよ!
 同じようなものなら文具の他のコーナーにもインテリアコーナーにもある。前者は接着テープ類、後者は壁紙やデコレーションペーパー、テープの類だ。確かにそれらをシールとは言わない。
 だが男の希望する用途とは全く違う。だいたい白くない。様々な色や模様で彩られている。
 まだ言い募るようなら、順番に各コーナーを案内していかなくてはならない。店員は内心肩を落とした。接客業の常、圧倒的に人手が足りない。申し訳ないが、ひとりの客にそうかかずらわっているわけにはいかないのだ。
 その証拠にこちらを気にしているほかの客の視線が痛い。彼らも何か聞きたいことがあるのだろう。荷物の到着時間も近い。
 「自分でちょっと見てみる。ありがとね、案内してくれて」
 どうやら空気は読めるらしい。人懐っこい笑顔になった男に一礼し『ごゆっくりどうぞ』と声をかけ、店員は次の客に向き直った。
 









 「すいません、ちょっといいですか?」
 ――うわぁ、来た!
 最初のヤマであるランチタイム――昼休みを利用して店に来る客は結構多い――をこえ、次のヤマである退社時間には間のあるいわゆるアイドルタイム。店員が遭遇したのはアポロンメディアが誇る新人ヒーロー――本人は変装していてばれていないつもりらしいが――だった。とたんに――精神的に――身構えてしまうのは彼がキラッキラな王子様だから、ではない。
 「二辺じゃなく三辺が開いていて書類がはさめるB5サイズのクリアファイルが前あったと思うんですが」
 「こういう、本のようになっていて、何枚も収納できるタイプでしょうか(手元にはB5サイズ、20ポケットと書かれたクリアファイル)?」
 「形はそうです、でもこれじゃなく、一枚ずつはさめるタイプのものが欲しいんです」
 「あ、はい。お待ちください――あー、ホルダーの方ね――」
 彼と自分がいるのはクリアホルダーやリフィル類の売り場だ。手早く確認するも、そもそも時代の主流がA4サイズなため、B5サイズの商品は数が少なく、該当品はない。ここに出ていない商品が店にないこともよく知っている。何しろ自分が担当なんだから。
 「申し訳ありませんが、当店におっしゃられている商品はございません」
 「だったら取り寄せてもらえませんか?」
どうしても欲しいんですと言われ、店員は発注用の携帯端末を取り上げると、手近なクリアホルダーのコードを読み取らせ、専用ページに飛んだ。そこからさらにワードを重ね、B5サイズを表示する。
商品の数は驚くほど少なかった――透明か半透明の二種類のみ。どちらも縦横二辺が開いたタイプだ。さらに検索をすると、該当商品が五年前に廃番、つまりもうチェーンの工場では生産していない商品であることが分かった。イコールここでどうこう言っても手に入らないもの。
ウェストゴールド店は二年前にリニューアルされ、その当時店にあった商品はすべて他店に送った。
ついでにいえば店員はそれ以前からこの店に勤めていた、いわば古参なわけだが、BBJの求める品を見たことがない。
――需要がなかったのね。
雑貨屋だって日進月歩。特に薄利多売を身上とするだけに、めったに売れない商品を製造販売しつづけることは、無駄なコストを増やすだけ。おそらく販売データを鑑みた上部が製造中止を決定したのだろう。無論そんなパソコン上のデータなんかなくても、店員として現場を任された人間にはなんとなく『あ、これ、駄目だ』という勘が働くものだけど。
同僚の若者が苦も無く振り回す携帯端末の操作に辟易しながら、彼女は冷静に判断した。だが。
「え、困ります! 僕、あのシリーズで揃えてたのに。今更別のシリーズなんかいれたら、部屋の雰囲気がめちゃくちゃだ」
どうしてくれるんです?と詰め寄られても、どうしようもない。ないものはないのだ。
「ニーズがあれば答えるのが店側の責任でしょう。僕だけじゃない、あの商品のユーザーは他にもいるはずだ!」
「と、言われましても・・・・・」
末端の人間に、そこまでの権力などあるものか。
「そんなことなら、あの時全部買い占めればよかった、置くところがないからってあきらめずに!」
シュテルンビルトきってのハンサムは懊悩する顔も美しい――じゃなく。
「これだけじゃない。あれも――」
――始まった・・・・・・。
最初は話題のルーキーの来店に店員達は我先に彼の接客をしたがったが、今はそんなことはない。むしろ気づくや、波が引くようにさっと逃げる。
BBJのこだわりは半端ない。
それに本人は熱心なだけだろうが、いちいち説明を求められる。以前店頭に並べられたクッキーを片手に『この商品の添加物で身体に一番害がありそうなものはどれだ?』と質問された時のことを思い出し、店員はつきかけたため息を飲み込んだ。さすがにそれは客に失礼だろう。
彼の来店からすでに十分。おそらく目的の商品はまだあるはずで。一体どれくらいの時間、付き合わされるかわかったものじゃない。
――そんな細かい設定のもの、雑貨屋に置いてあるか! こだわるんなら、専門店に行ったらいいでしょ、どこにあるか知らないけど。ああ、もう! 助けてヒーロー!
テレビで見るさわやかハンサムどこ行った? というか、素の彼ってなんでこんなにしつこいの、うわぁ、これとバディ組んでるワイルドタイガーってすごい!
この街で一番人気のヒーローは、自分が『めんどくさく、扱いにくい客』『接客したくない客NO.1』として店員達のブラックリストに挙がっていることを多分知らないだろう。
――変装ばれてないって思ってるところが恐ろしい。







それにしても。
朝といい、午後といい、なんで今日はこういう客ばかりに行き当たるのか。
――今朝の占いじゃ、今日は『大当たりの日』なはずだったけど。
こんな大当たりはいらない、と店員はひそかに思ったのだった。

















ある店員の一日・2





開店前。某雑貨屋チェーンウェストゴールド店のバックルームは重苦しい空気に満ちていた。
 どうもこうも、いましがたの電話、そして送られてきたファックスのせいだ。
 
『今度、〈ミテみて〉の【いまコレ】コーナーでうちのオリジナル商品取り上げてくれることになって、この店で撮影するから!』

〈ミテみて〉とは。
平日の夕方四時から七時の三時間、生放送で放送される情報ニュース番組である。同じ時間帯に同じような番組が何本も放送されているが、その中でも一番視聴率が高いそうだ。【いまコレ】はその中でも特に人気の高いコーナーで、今シュテルンビルトで流行っている人物や店、物に至るまで幅広く取り上げ、紹介してくれる。
このコーナーで放送され、売り上げが倍増した店や商品は多い。もちろんそれを狙っているのだろう。だが。
「テレビの撮影なら新しい店でやればいいのに」
ついひと月前、シルバーステージに旗艦店を新規開店したばかりだ。どうせなら宣伝がてらそこを使うのが本筋だろう。
「早々に商品なくなったのと、ばたばた人やめてるんで、それどごろじゃないらしいよ」
「そういや、応援要請きてたわね、無視したけど」
「っとにねー、忙しくてイライラするのはわかるけど、あんな風に頭っから怒鳴りつけたら、若い子なんてすぐビビッて辞めちゃうんだから」
「でもさぁ、あっちでやってほしかったよね」
店員達が淀むのにはもっともなわけがある。
「なんでゲストがよりによってタイガー&バーナビーなわけ?」
タイガーの方はよく知らない――最近、よくテレビに出てくるようになったから、調子のいい、ひょうきんなおじさんであることは、なんとなくわかっている――が、バーナビーは別だ。彼はこの店の店員の間で、ブラックリストのトップに挙がっているほど『超めんどくさい客』なのだ。こだわりは激しいは、執念深いは、さすが二十年も親の仇を追いかけた根性は伊達じゃない。だけどそれはもっと別のところで発揮してくれ。雑貨屋で発動するものじゃない。
一度でも彼に接客したものならわかる、同士的な視線を彼女らは無機質なファックス用紙に集めた。
「大丈夫じゃない、番組の収録でしょ? きっといつもみたいに好青年っぽくやるわよ」
変装がばれてないって思ってる『素』の時と違って。
「リポーターのマシューがついてるし」
「っていうか、相手するのえらいさんでしょ、店長とかマネージャーとか」
そうよね、あははは。
面倒くさいことは笑って見過ごすに限る。
「じゃ、とっとと開店準備しますか!」














「【いまコレ】コーナー担当ディレクターのスティーブンスです。こちらがカメラマンのオットー」
「リポーターのマシューです! それと本日のゲスト、タイガー&バーナビー!」
倉庫兼任のバックルームで撮影前の簡単な打ち合わせをしているテレビスタッフと『うちのお偉いさん』方を横目で見ながら、自分の担当の商品を台車に乗せた。しばらく、というか、勤務時間が終わるまで、ここには近寄りたくない。
――まあ、見てる分には確かにかっこいいよね。
バーナビーは言わずもがな、タイガーだってすらっとしていて、黙って立っている分には結構いけてる。あくまで『黙って立っている』状態に限るが。
なにしろここに来るまでによそ見をして一回は棚にぶつかりかけ、一回は何もないところで転びそうになった。商品を手に取ろうとして一列全部倒してしまい、慌てふためいて――そして乱された売り場を元に戻したのは、ほかならぬ自分だ。
撮影するのは電子レンジ用の調理器具に決められていた。もちろん前日までにその売り場はきちんと整理され、在庫だしも完了している。
自分の担当は全く反対側の文具コーナーだ。うまくいけばまったく彼らに関わらずに済むかもしれない。そう思いながらレジの後ろを通った。平日午後のアイドルタイム、三台あるレジは一台しか解放されていない。そこに立っているのは入ったばかりの新人だ。一通りのレジ業務はこなせるが、まだまだフォローは必要だった。彼女に何かあったらすぐ呼び出しベルを押すよう、声をかけ、ファイルの棚の前に立つ。ペーパーレスだの、書類の電子化だの、声高に叫ばれているが、一向に紙の書類はなくならないし、それを整理、保存するファイルは必需品とされている。さてやるか、と脚立を持ち出したところで、子供の甲高い声が響いた。振り向くと、幼稚園帰りらしい男の子ふたりが追いかけっこを始めていた。店内放送でいくら『走らないでください』『大人の方はお子様の手を握って離さないようお願いします』とやってもこういう光景はなくならない。さて引率者はどこかと見渡せば、ちらちらとキッチンコーナーを覗き込むようにしながらおしゃべりに夢中だ。バディがいることに気が付いたのだろう。
やれやれとは思ったが、どこかにぶつかってけがをされたりするのも困る。店員は脚立の上からそっと子供達の様子を伺った。保護者が気が付いて止めてくれるのが一番理想的なのだが。
――あ!
常連のひとりである老人が別の店員に商品の説明を求めている。前から危なっかしい歩き方だったが、最近、つえをついて来店するようになったその人は、それでもいつもひとりでやってくる。
歓声を上げた子供達がそちらに向かって走っていく。もちろん前なんか見ていない。
「店内を走らないでください!」
とっさに大声を発した。何しろ陰で『拡声器』と呼ばれているほどの声量だ。子供達にも、老人のそばにいた同僚にも届く。
男の子達はぴたりと立ち止まった。恐る恐るあげられた視線を真っ向から受け止める。ことさら睨みはしないが、接客のモットーである『笑顔』はなしで。
子供達はこそこそと自分の母親のところへ行ってしまった。
レジの店員がこちらを見て肩をすくめるのに同じ動作で返し、中断していた作業に戻る。ただでさえ番組撮影などというイレギュラーがあってピリピリしているのだ。これ以上厄介ごとを起こしてくれるなというのが正直な気持ちである。
その祈りは聞き届けられなかった。
呼び出しベルの音が鳴り響き、レジに飛んでいくと、新人が接客をしながら『あれ、あの子』とひきつった顔で示す。
二、三才だろうか、小さな女の子がよちよちとおぼつかない足取りで歩いている。機嫌よく上下されている両手にはグラスが。
ベルが鳴れば店員全員がレジに集まるよう決まってはいたが、来られたのは自分ひとりだ。もうひとりの姿はない。
――取り上げたら泣くだろうな。っとにもう、ちっちゃい子放り出して、親どこよ?
そう思ったがどこかにぶつけられたり、まして転ばれでもしたら目も当てられない。店員は女の子の前でしゃがみこんだ。目の高さを合わせる。
「ごめんね、これ、売り物で、あなたのおもちゃじゃないから」
眼を見ながら、ついでに笑顔を作りながらそっと小さな手からグラスを取った。女の子はぽかんとした顔でこちらを見ていたが、やがて火が付いたように泣き出した。
「うちの子に何してんのよ!」
「うお、セーフ!」
女性の金切声と上ずってはいるが安堵を含んだ男性の声が同時に聞こえ、店員は目を瞬かせた。
ぐすぐすと泣いている女の子は緑のラインの入ったブレスレット(?)をつけたたくましい腕で持ち上げられ、まなじりを吊り上げた若い女性――たぶん子供の母親――に押し付けられる。
つられるように店員も立ち上がった。
「あんた母親だろ? いくらバニーのファンでもよ、子供ほったらかしにするのはまずいだろ。この人が止めてくれなきゃ、この子、大怪我するかもしれなかったんだぜ?」
びしっと自分の持っているグラスを指差したのは、ハンチングとアイパッチの、最近よく見るバディの片割れ――ワイルドタイガー。
「それ振り回しながら歩いてたんだ、ぶつけたり、転んだりしたらどうなるか・・・・・わかるよな?」
「その人の言うとおりです」
もうひとりも近寄ってくる――シュテルンビルトの英雄。イケメンヒーローのバーナビー。
「子供さんから目を離してはいけません。ちょっとの油断で、とんでもないことになるかもしれないんですから」
口調は優しげだが。
――注意喚起、じゃないわ、超おどしてる。
微笑んでいるようで、ふたりとも眼が笑っていない。これは怖い。かなり怖い。
母親はぽかんと口を開けてふたりを交互に見、耳まで真っ赤にして走っていった。方向は――出入り口だ。
――自動ドアにぶつからなきゃいいけど。
妙に冷静に過去の騒ぎが思い出される。
「それにしてもお姉さん達、すげぇな。さっきのベル、あれ知らせてたんだろ?」
「ああ、はい。あ、すいません、助けていただいてありがとうございました」
ふたりに頭を下げると、バーナビーは軽く肩をすくめた。
「たいしたことじゃないですよ、ああいう人には適度にくぎを刺しておかないと。クレーマーになられても困りますし」
なるほど、やっぱりバーナビーは頭がいい。客とのトラブルは、昔のようにひたすら謝ればいいというわけではない。主張すべきところはきちんと主張して、お互いの非を認めあうことも――つまり客側にも責任があると気付かせる――必要なのだ。いうなればへたに下手に出ればつけあがり、とんでもない要求をする者も出てくるわけで。そうならないようにするさじ加減が難しい。
――っていうか、あんたがクレーマー一歩手前なんだけど。でも、これからは少し大目に見てあげようか。ヒーローだものね、本当に。
ワイルドタイガーがにぃっと笑った。
「なあ、この店じゃお姉さん達がヒーローなんだ。俺達の出番、ないわけだよな!」
――あれ?
この声を知っている。つい最近も聞いた気がする。
店員はタイガーを見上げた。
この身長の差。特徴のある顎鬚。
ものすごく。ものすごく、既視感がある。
「!」
叫ぶのをかろうじて抑えた。
なんということだ、バーナビーだけじゃなかった。



――え、うそ? ほんとに本物なの? うちってマジでヒーローが買い物に来てたわけ?
頭の中がエクスクラメーションマークでいっぱいになる。



どうやらこちらが察したことを察したらしく、ワイルドタイガーは気まり悪げな顔になって、頬を掻いた。
「あー、なるべくなら、知らんふりしててくれたらありがたいんだけど」
――そんなのもちろんよ! 
店員はふたりを見上げて、こくこく頷いた。シュテルンビルトを守るヒーローが、気安く買い物できる店の一軒になるくらい、お安いことだ。『ね!』という意思を込めて周囲を見渡せば、ぐっと拳を握った仲間達もうんうんと頷いている。
「ありがとな」
「ありがとうございます」
ヒーロー達はほれぼれとした笑顔を浮かべた。




某雑貨屋チェーン、ウェストゴールド店。
妙なあごひげのオリエンタル系の男性が、自分の欲しい物の名前が出てこず、両手を振り回して説明する光景も、もっさりとした黒縁眼鏡の金髪の青年が、マニアックな商品を欲しがって駄々をこねる光景も、これまでと変わらない。けれど店員達の応対はほんの少し――髪の毛一本ほど――しょうがないなぁという苦笑交じりのものに変った。










おまけ




「ないわー、これ」
今期一番のおすすめ商品をバッサリ切られ、店長の顔はひきつった。
「そういういい方はないでしょう、タイガーさん」
「だってないって。オムレツ作るのに、何回レンジを出し入れするんだよ、めんどくさい。んなことなら、小さいフライパン出してきて、作った方が絶対早いって」
先ほどから全部これ、である。ホワイトソースを作るソースパンは『鍋で作った方が早いし美味い。だま? そんなもん、ミキサーにかければ一発』と言い切られ、一合炊きの炊飯器に至っては無言ではねつけられた。
こちらとしては『すごい』『便利ですね』という言葉を引き出し、売り上げにつなげたいのだが、これでは全く真逆の反応を招きかねない。
困ってマシューを見るものの、彼もどうしたらよいかわからないらしく、手を出しかねている。
そうこうしているうちに、ふとタイガーが斜め上にある防犯用のミラーを見つけ、眼を細めた。それはちょうどレジから死角になる通路を映すように取り付けてある。角度によってはこちらからも映っている者が見える。
「バニー、あれ」
低い声で相棒を促す。バーナビーの表情も変わった。
「行くぞ!」
身を翻したタイガーは止める間もなく、レジの方へ走っていった。すれ違う人の間を器用にすり抜けていく。もちろんバーナビーも後を追う。
「バ、バーナビーさ〜ン、タイガーさん!」
「撮影が!!」
あとには慌てふためくスタッフのみが残された。






































理髪店にて




からんからんとベルが鳴る。
 「いらっしゃ・・・・・・!」
 理髪店の店主は暇つぶしに呼んでいた雑誌からそちらを向き、もはや条件反射になっている言葉を途中で飲み込んだ。
 入ってきたのはここしばらく――たぶん去年のクリスマス前あたりから――見ていなかった顔だ。きょろきょろと子供のように店の中を見回し、こちらを見て、人懐っこい笑みを浮かべる。
 「ひさしぶり。元気だった、親父さん?」
 十年以上になるだろうか、この男が店に来るようになってから。こだわりがあるらしく、髪は切らせるが絶対に髭をそらせなかった。そんな客は初めてだから、店主も意地になっていろいろ攻防戦もしたが、あることに気付いて以来、その話はこちらからしなくなった。
 ちなみに男の顎髭は短い間に何度か格好を変え、今の形に至る。
 「相変わらず、客いないなぁ、そんなんで店やってけてるの?」
 「大きなお世話だ。毎日の食い扶持が稼げれば、それでいいんだよ。で、用は?」
 「だっ! 髪切る以外に床屋に来る用あんのかよ」
 そりゃあ、そうだ。店主は大口を開けて笑った。男もカラカラと気持ちよさそうに笑う。
 「頼むわ」
 古びたバーバーチェアに腰を下ろした男に、ケープを回しかけ、店主はヘアカットの道具が入った三段ワゴンを引き寄せた。普段は整髪料をつけてしっかり固めている髪は、ここに来るためだろう、降ろしたままだ。
 毛先は荒れているものの、黒にごく近いこげ茶色の髪は加齢による痩せもなく、腰もしっかりしている。スプレーで水を吹きかけてまんべんなく濡らし、店主ははさみを取り上げた。
 「髪形どうする、変えてみるか?」
 「うーん、そうだな・・・・・」
 鏡に映った男は軽く口をとがらせ、首を傾げた。
 「いいや、いつも通りで」
 「よっしゃ」
 シャキシャキと小気味いい音が静かだった店内に満ちる。くしで切ったところを梳き、店主は目を眇めた。最近眼鏡の度が合わなくなってきたのだ。
 ――ここんとこは、少し長めにしないと。
 男の身体で傷のないところなどない。もちろん頭もだ。額、側頭部、後頭部まで何かしら怪我の跡がある。それらを隠すようにカットするのが、彼の職業に気付いてからの習わしだ。
 「やっぱり親父さんとこが一番安心して切ってもらえるわ。俺、実は仕事辞めて田舎に引っ込んでたんだけど、床屋が一番困ったなぁ。ガキの頃行ってた店も代替わりして、あれって感じでさ」
 男はしみじみ『ほんと、床屋とかって相性だよな』と呟いた。
 「美容院なんてこじゃれたもんには敵わんが、カットじゃシュテルンビルトで一、二を争う腕だぞ、わしは。田舎の店と比べんな」
 「はは、言うねぇ」
 言いながら男の眼が壁に向かうのを鏡越しに見る。数々の理容コンテストで賞を取り、もらったトロフィーやメダルがそこに飾られているのだ。どれも少しくすみ、リボンの色がセピアめいているが。
 「道理で少し伸び取るな」
 たぶん自分で切ってみたりしたんだろう、毛先が不ぞろいだ。
 前に一度こういう状態になっていた時を覚えている。そのときも来店の間隔が長かった。やっと来た男の顔はずいぶんやつれていて、顔色も悪かった。口数も少なかった。
 『いつも通りに』
 億劫そうにそれだけを言い、バーバーチェアに座りこんだ男の髪を無言で切った。店の手伝いをしていた妻が心配そうな顔をしていたが、奥へ追いやった。
 「いいなぁ、夫婦そろって同じ店で同じ仕事をして」
 ぽつんと男が呟いた。
 「いいことばかりでもない。ずっと一緒だから、言い争いになることもしょっちゅうだ。それでも顔を合わせなきゃならん」
 因果なもんだよ、と言って返したら男は『でも、いいなあ』と繰り返した。
 「俺にはもうねぇもん、嫁さんと言い争いになることなんて」
 男の左の薬指に、指輪があることは最初から知っていた。娘がひとりいて、眼に入れてもいたくないほどかわいがっていることも。
 ――ああ、そうか。


 そういうことなのか。
 

 「さ、すすぐぞ」
 男を洗面台に移動させる。されるがまま、あおむけに椅子に横たわった男の顔にタオルをかけた。シャワーの温度を確かめる前に軽く男の肩を叩く。
 ――ここにはわししかおらんから。
 ――水音で何も聞こえんから。
 伝わったのだろうか、切った髪を流している間、男は一度だけ肩を震わせた。
 ――そんなこともあった。
 昔の話を思い出しながら、けれど手は的確に動く。男の髪は少しずつ短くなり、整えられていく。
 「俺さぁ・・・・・またこの街で働くことにしたんだ」
 すすいだ髪をドライヤーで乾かしていると、男は突然そう言った。
 「ほう。田舎暮らしは嫌になったか?」
 「だっ! そんなんじゃねぇよ。今までほったらかしにしてた分、きちんと家族孝行しようってさぁ、頑張ったんだぜ、俺? でもさぁ。娘に『お父さんかっこ悪い』って言われたんだよ。そんなのらしくないって。そういわれたらさあ・・・・・」
 本当の自分の気持ちに気付いたんだ、と言った男の顔は、鏡越しでも強い決意に満ちていた。
 「前いた会社に連絡して、昨日行ってきたんだ。で、も一度雇ってもらえることになって。今日契約かわしてきた。前と同じ待遇じゃねぇし、相棒もいなくて、ひとりで再出発だけど、それでもいいんだ」
 琥珀の瞳が鏡に映った店主の顔を見つめる。
 「だからまたこの店ちょくちょく寄らしてもらうわ。よろしくな」
 「おう、まかしとけ」
 力強く言い返すと、男は子供のように笑った。



















 閉店時間になった。外の明かりを消し、施錠したドアにカーテンを引く。慣れた手順で店を閉めると、店主は奥の部屋に向かった。
 キッチンで冷凍のディナーセットを温め、ビールと一緒に居間へ向かう。チェストの上に置いた写真をテーブルに乗せ、そこに向かって缶を掲げた。
 「帰ってきたよ、わしらのヒーローが」
 写真の中の笑みは何も答えない。
 「店を畳もうと思ってたのになぁ。また通ってくれるとさ・・・・・うれしいじゃねぇか」
 食事を済ませたら、電話をかけなければならない。一緒に住もうと言ってくれた娘に、まだもう少しここで頑張ってみると。理由を聞かれればこう答えるのだ。
 「ヒーローがわしを頼りにしてくれるんだ。それにこたえるのが、シュテルンビルト市民の心意気ってもんだ」
 きっと、彼の相棒のきらきらした青年も、この街へ帰ってくるだろう。彼は、彼らは。
 『ヒーロー』なんだから。






























 












やがて星の街に、見慣れた光景が戻ってきた。













『タイガー&バーナビー、見事犯人を確保、人質とされていた市民達も無事です!」














                   END


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