徒然

日々の徒然及び小ネタ
時々菜園日記
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インテ新刊サンプル

JUGEMテーマ:趣味



8月21日 6号館Dや14b IOLITEにて領布する新刊のサンプルです。第1章まるっと。

『千年の契』〜TIGER&BUNNY 並行世界・幻想譚〜
表紙込96P ¥1000

なんちゃってオリエンタル風ファンタジーです。元のネタは『蜻蛉』という漫画だったのですが、完結していないうえに、そもそも元ネタ自体が起承転結の『起』しかコミックスになっていないもので、ほぼオリジナルです。
兎と月と獅子が虎を追っかけまわしております。
エビシスが双子。ロトワングが出張ってる、結構流血シーンが多いし、虎徹さんはともかく、バスバス人がお亡くなりになりますです。
化け物もぞろぞろ徘徊してます(後半)

そんなお話ですが、当社比3割増しで虎徹さんをかっこよく書こうと頑張ったので、よかったら読んでやってください(平身低頭)

そして多分当日どのサークルさまよりもシンプルな表紙です・・・・・Key頑張りました!! 初めて一から表紙作ったよ・・・・・


間に合えば友恵さん視点の友虎小話が付きます。
 一



シュテルンビルト大陸を統べる大国――アポロン帝国。国名と同じ名を持つ帝都の大路をひとりの男が悠然と闊歩していた。
 この街の住民とは毛色の違う、明らかに異国の民であるその男は、くしに刺した焼肉を頬張りつつ、興味深げに市に立つ露店を見て回っている。
 「兄ちゃん、どっからきなすった?」
 細工物の屋台を覗いていた男の背に声をかけたのは、どこか狐のような顔をした中年男だった。男は振り向いて『俺?』とばかりに自分を指差す。
 「そ、あんただ。見たことのない服だ、どこの国のひとかね?」
 「オリエンタル皇国・・・・・大陸の東、秋津(あきつ)内海(ないかい)の向こうの国の者だ」
 奇妙な形の髭が動き、紡ぎだされたのは意外にも深く男らしい声だ。見た目より、存外年齢は上なのかもしれない。
 「またずいぶん遠いところからきなすったんだな。アポロンは初めてかい?」
 「ずいぶん昔に一度来た。相変わらずにぎやかな街だな」
 中年男は素早く相手を値踏みした。形の変わった白い上下の上に纏った表着はよく見れば細かい織り模様がつけられた絹、腰の細帯にも金糸銀糸で刺繍が施されている。
 何よりも男がつけている宝飾品――長く伸ばした黒髪をひとまとめにしているひもは複雑な形で編まれた組み細工。両の手首には玉を連ねた腕輪をいくつもつけ、腰に下げた細太刀も装飾はないが見るからに上物――は、相当な価値がありそうだ。
 ――こいつぁ・・・・・極上のカモかも。
 皺だらけの咽喉が、ごくりとなる。
 「じゃあ、今アポロンで流行っている遊びをしていかねぇか、サイコロ遊びなんだ?」
 男は大路の角に引かれた布を示した。無精髭を生やした男が胡坐をかいて座ったその前には小さな竹の壺が三つ、等間隔に並んでいる。各々の周囲には銅銭がばらばらと置かれていた。
 「この三つの壺のどれかにサイコロが入ってる。それを当てるだけだ。どうだ、簡単だろう?」
 「・・・・・真ん中の壺だな」
 男はこともなげに言い放つ。中年男はまぁ話の続きを聞け、と手を振った。
 「だが遊びに加わるなら、銭を掛けにゃあならねぇ。当たれば出した銭は戻り、外れたふたつの壺に掛けられた銭も当ったやつに分配される。そういう仕組みだ」
 どうする?
 男は暫し思案ののち、乗った、と短く答えた。懐から小さな巾着を取り出すと、銀の小粒を取り出す。
 「悪いが銅銭は使ってしまったんでな、これでもいいか?」
 わっと小さく悲鳴じみた声を上げたのは、胴元の男か、周囲か。このあたりの住人はついぞ目にしたことのない大金だ。
 視線が鋭くなってしまっても仕方がない。
 「じゃあ、兄ちゃんの言った真中から」
 垢に汚れた手が壺を持ち上げる。男の言った通り、サイコロがその場に現れた。
 感嘆の声の中、男はにっと人好きのする笑みを浮かべた。
 「俺の言ったとおりだろ」
 「ああ。これがあんたの取り分だ」
 小粒銀とともに、銅銭のいく足りかが男の前に置かれた。男は肉のなくなったくしをくわえたままそれを受け取る。
 「こんな遊びのどこがおもしろいんだか、俺にはちっともわからん」
 「そりゃ、サイコロ遊びの醍醐味は何度も続けにゃわからねぇ。もうちっと、遊んで行けよ」
 そんなもんかね。
 男は自分も布に座った。再びサイコロが竹壺に投げ込まれ、巧みな手さばきで三つの壺が回される。
 止まった先、左側に置かれた壺に、男は銅銭を置いた。
 「これだ」
 開けられた壺の中に、果たしてサイコロはあった。
 「大当たりだ、すごいな兄ちゃん」
 「まあな」
 「もう一回どうだ?」
 そうして何度も繰り返すうち、男の前に銅銭が山となった。噂を聞きつけて他の客も集まってくる。やがてその場の全員が男が選んだ壺に駆けるようになったころ、胴元がわざとらしく声を上げた。
 「かー、まいったな兄ちゃん。みんな、あんたと同じとこに掛けちまう、これじゃあ『勝負』になんねぇよ」
 大仰に手で顔を覆う。
 「もう、終わりか」
 男は自分の得た銅銭を巾着にしまい、立ち上がろうとする。
 「なら俺は」
 「おいおい、勝ち逃げはねぇだろ?」
 困ったふりをしながら、胴元は内心で舌なめずりをした。
 「『勝負』にならないんだろう、だったら」
 「だから俺と『一対一(サシ)』で勝負しようぜ」
 目配せで男の周りを仲間で固める。逃げようとすれば地からづくで押さえつけ、どうにも勝負をさせるためだ。
 ――身ぐるみすべてはぎ取ってやる。
 加えて珍しい異国人。よく見れば見目のいい男だ。『本人自身』も高く売れるだろう。
 「俺はこれをかける」
 胴元は男が持っていたのよりさらに大粒の銀を取り出した、それもふたつ。
 「一発勝負だ。兄ちゃんが勝てば兄ちゃんの総取り。俺が勝てば俺の総取りだ。どうだ、男なら乗ってみないか?」
 胴元の言葉に見物人達がざわざわと騒ぎ出す。中には『やめた方がいい』と男に忠告する者も出てきた。
 「うるせい、外野は黙ってろ!」
 親切な者達が乱暴に腕を掴まれ、輪の外に放り出されるのを見届け、男はゆっくり口を開いた。
 「だがそれではあんたの分が悪かろう。俺の取り分と、その銀では額が違いすぎる・・・・外れればそっちが大損だ」
 「なあに、勝つときがあれば負ける時もあらぁ。そいつがこの遊びの醍醐味よ」
 ――外すわけ、なかろうが。
 何のための博打屋稼業か。長年鍛えた『腕』の見せ所だ。
 「さあ、兄ちゃん、やるか、それともやめるか?」
 こういわれて乗ってこなかった客はいない。
 「今の俺には負ける気はないぞ。いいか?」
 案の定、男は乗ってきた。
 ――やった!
 「そう来なくっちゃ」
 逸る気を押さえ、胴元は壺にサイコロを投げ込んだ。
 「ちょっ、いつもよりはえぇ」
 「それに長くないか、回す時間?」
 三つの壺は目にもとまらぬ勢いで動き回る。それを男は半ば眼を閉じて眺めていた。
 ――そしていつもどおりに。
 ぴたりと壺が止まった。
 「さあ、兄ちゃん、どれだ?」
 見物人達は右だ左だいや真ん中だとかますびしい。
 男は視線を上げ、瞬きもせず胴元を見つめた。
 「さあ!」
 気圧されるように気がして声を張り上げる。すると男は、清流の様な涼やかさで『開けろ』と言った。
 「開けるさ、兄ちゃんが選んだ壺をな」
 「すべてを」
 片膝を立てた男ははっきりと『三つ同時に』と告げる。胴元と、男の周囲を固めた者達の間に動揺が走った。
 「な、なんでぇ。なに、寝言言ってやがる! ここまできて『勝負』を投げようってのか? 冗談じゃないぜ」
 「だから開けろと言っている。ここにいる皆の面前で、三つ共にと」
 こともなげな言い草に、胴元は顔に朱を走らせた。
 「どれか選べねぇっていうんなら、この『勝負』、俺の勝ちだ! いちゃもんのつけは払ってもらおうか! おい、こいつ、ふんじばれ!」
 「やめろ」
 襲い掛かろうとする男達をものともせず、男は命じた。風を切るような音がする。
 「怪我をさせるな、鏨(タガネ)、朱子(シス)」
 いつの間にか。
 男を守るように、ふたりの人物が立ちはだかっていた。どちらもひと目でアポロンのものではないとわかる、美しいがどこかひと離れした、まさに『異形』。
 ひとりは長槍を携えた男性、ひとりは両の手に小太刀を構えた女性。どちらも白銀の髪色で、肌は抜けるように白く、瞳は柘榴石のように赤い。
 「ご無事ですか、我が君?」
 「御戯れが過ぎます。宮様」
 繰り出された小言に男は苦笑いを浮かべる。
 「な、なんだてめぇら? どこから出た?」
 槍の柄を喉元に突き付けられた胴元が喚く。
 「鏨も朱子もすっと俺のそばにいたぞ」
 『宮様』と呼ばれた男はすっと壺に近寄った。
 「嘘付け、そんなやつら、いなかったじゃねぇか!」
 ――まずい!
 胴元の焦りをよそに、男は右の壺を指ではじいた――中は空。
 「俺にもよくわからんが、眼には見えずともふたりはいつも俺のそばにいるんだ」
 「そんなわけのわからん話あるか!」
 さらに左の壺をはじく――これも空。
 「わからんでいい。それがこのふたりの役目」
 残ったのは真ん中の壺。男は牙のようにも見える犬歯を見せてニッと笑った。
 「そしてそれを黙って受け入れるのが、俺の役目だ」
 壺がきれいに飛んだ。並んで転がるその下、サイコロはどこにもない。
 「ない!」
 周囲がざわめく中、鏨と呼ばれた男は強かに胴元の手首を撃った。とたん袖の内から転がり落ちる小さな立方体。
 はっきりと示された騙しの証に、怒号が沸き起こる。
 「いかさまだ!」
 「こいつら、いかさましてやがった!」
 「てめぇ、俺の金、返せ!」
 怒気をあらわに周囲が殴りかかるさまを横目で見つつ、男は連れを促してその場を離れた。
 「さて、土産を見つくろうとするか」
 「宮様・・・・・」
 呆れたように朱子が咎めた。男の手のひらにはちゃっかり大粒の銀が握られていたからだ。
 「これは俺の取り分だ。なに、奴らが人を欺いて集めた金だ、俺がもらっても構うまい」
 からからとたてられた笑い声に、鏨ががっくりと肩を落とす。
 「オリエンタル皇国の鏑木宮様ともあろうお方が」
 賭博に参加したばかりか、上客をよそおって相手を誘い、荒稼ぎとは。とても安寿さまには言えません。
 鏑木宮は楽しそうに笑うばかりでそれにこたえることはなかった。
 


 この年、秋の実りの季節。アポロン帝国はふたつの慶事に湧いていた。
 ひとつは今上帝アルバート一世の在位二十周年を記念する式典、もうひとつは先年正式に立太子した先帝の忘れ形見、バーナビー皇子の誕生日を祝う式典である。一か月に及ぶこれらの行事のため、帝国内の貴族達ばかりでなく、周辺国の国王やその後継者が帝都アポロンに集っていた。
 オリエンタル皇国第二親王である鏑木宮虎徹も、兄である日嗣皇子村正親王とともに、母・安寿女皇の名代としてまみえている・・・・・はずなのだが。
 「わが弟は諸侯の招待をすべて断って、毎日帝都をふらふらほっつき歩いている」
 と兄皇子が嘆くほど、社交に興味がない。
 もっとも虎徹に言わせれば『祝いにかこつけての帝都見物』であり、王侯・貴族達の親睦会という名の腹の探り合いなぞ『自分にできるはずがない』のだから、好んで出席するいわれもないのだが。


 
 ふと、朱子が上を見上げた。どこかぼんやりとした色の空にそれだけはくっきりと黒い点が舞っている。
 「村正様がお呼びです・・・・・至急、館へお戻りくださいませ」
 「はて・・・・・?」
 兄は自国の大使とともに皇帝主催の親睦会に出席する予定になっていたはずだ。堅苦しい席はごめんだとばかりに早々に欠席を申し立てた弟に、返ってきたのは苦笑付きの承諾であったのだが。
 「戻ったか、虎徹」
 虎徹を出迎えたのは皇国の最礼装を纏った兄皇子本人だった。
 「どうかしたか、兄上?」
 「どうにもきな臭い。直接話を聞いて、お前の判断に任せた方がいいと思ってな」
 「・・・・・ふぅん」
 村正がおのれで決さず弟の判断を伺うような事態はめったにない。だが過去何度かあったその際は、必ず重要な決断をせねばならない時だった――特に皇国にとって。
 「わかった。すぐに支度する」
 虎徹がざっと湯あみをして自室に戻る間に、鏨が支度を整えていた。オリエンタル皇国の武官の長である鏑木宮の最礼装は『衣冠束帯』でも兄の着ているものとは違う、脇を縫い合わせない『闕腋袍(けってきのほう)』だ。
 村正が臙脂の単に紅緋地黄小葵紋の下襲を重ねているのに対し、虎徹は萌木の単、若草から天色へと染め分けた下襲を纏った。黒の半臂、白い表袴と着ていき、漆黒の袍、短い別裾、平緒、石帯(飾りとして翡翠の環が下げられた)をつけ、髪を結い冠(武人らしく巻纓冠)を被り、愛用の細太刀、鞾を履く。
 「待たせた」
 「すぐに出る」
 こちらも着衣を改めた鏨と朱子を供に、オリエンタル皇国日嗣の皇子と鏑木宮は皇帝の住まう宮殿を目指した――波乱の海の中へ、漕ぎ出したのだ。
 
 



 
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